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2020.10.05News

第1回シェイクスピア勉強会(オンライン)を開催しました。

今年度は新しい企画として Zoom による会員限定のオンライン勉強会を 9 月 22日(火・祝)に実施しました。 学会とはちがうレベルで、日本全国の会員がつながって一つの作品について自由に意見を交換して、各自の思考を深める機会になればと思って企画したものです。Zoom は初めてという会員のために20 日に接続確認セッションを設け、Zoom の使い方にも慣れて頂いたうえで、実施しました。 2020年9月22日(火・祝日)13時30分~17時: 会員限定オンライン・シェイクスピア勉強会の概要 当日のスケジュールは以下の通りです。
13:30~14:20 「『ヘンリー四世』のフォールスタッフの笑いの矛盾――日常と非日常」
講師:河合祥一郎
14:20~14:55 質問・ディスカッション
14:55〜15:00 休憩
15:00~15:50 BBC制作Shakespeare Uncoveredの第5巻(50分)全編視聴
15:55~17:00 スペシャルゲストの松岡和子先生と河合のトーク
 視聴した DVD は丸善出版から『シェイクスピア――その魅力に迫る』と題して団体向けに発売されているシリーズの第 5 巻で、ジェレミー・アイアンズが案内役となって『ヘンリー四世』『ヘンリー五世』の世界を掘り下げるもの。丸善出版のご厚意により視聴が可能となりました。記して感謝いたします。  ゲストの松岡和子先生とは綿密な打ち合わせをし、14 時過ぎからご発言をいただき、内田樹の『街場の戦争論』の一節がシェイクスピアの描くアジンコートの演説とどう関わるかなど刺激的なお話をいただきました。Zoom であるため出入りが頻繁にありましたが、多い時で 76 名ほどの参加者数になっていました。  私からの問題提起は、「アフター・コロナ批評を考えたとき、フォールスタッフの捉え方は以前の批評と同じではいられないのではないか。とくに《作品の枠組みを超越する偉人としてのフォールスタッフ》といった A・C・ブラッドリーから発して高橋康也を経てハロルド・ブルームに至るような人文主義批評が果たしてこれからも可能なのか」という問いかけでした。松岡和子先生からは『第 1 部』のフォールスタッフは圧倒的な量の if を用いて私たちの想像力を刺激するが、『第 2 部』において激減するという点と、we few, we happy few の言葉の持つ効用について解説いただき、シェイクスピアがいかに巧みに作品を構築しているかを語っていただきました。  参加者からも活発な意見をいただくことができ、話は最近のオールフィーメルの『ヘンリー四世』上演(フィリダ・ロイド演出、2016 年)にまで及んで大変有意義な会だったと思います。終了後も「学会とは違った雰囲気で各人が遠慮なく質問できた」「リラックスして参加できた」「純粋な興味から楽しめた」などの感想とともに継続を希望する声や、今後の Zoom 勉強会としてはパネルディスカッションが効果的ではないかなどのご意見など、多数の反響を事務局にお寄せいただきました。今回の勉強会がどこまで成功と言えるのかは主催側の判断すべきことではありませんが、できればこうした試みを今後も続けていくとよいのではないかと思います。最後に、多大な協力をしてくださった松岡和子先生、事務局の菅原さん、そして参加してくださった会員の皆様に感謝申し上げます。 (河合祥一郎)